石叫■            「国民総幸福度」

 今回は「アジアをキリストへ」という吉田隆宣教師主幹の機関紙からの引用である。
彼は私が二十数年前に香港の日本人教会でお会いして以来の友である。

 「今年6月、初めてブータンの地を訪れた。私はある時、ブータンに関するドキュメンタリーを見ていた。美しい自然、日本の着物に良く似た民族衣装、そして、この国の人々が持っている豊かさに対する価値観に感動した。ところがそこで、私は初めてGNHという言葉を耳にした。『国民総幸福度』である。番組で、ブータンの田舎が紹介されていたが、電気もない村だった。そこに外国人がやって来て『この土地を売ってくれるなら、村に電気を通してあげよう』と交渉する。だが、非常に貧しい生活をしている彼らは、驚いたことに、『電気は要らない、私たちの村に入って来ないで欲しい』ときっぱりと返答したのである。その背後にある考え方が、『人間の幸福は物質的な豊かさにはよらない』という考えである。1972年にブータン前国王ジグミ・シンゲ・ワンチョクは『国民総幸福度』を提唱した。豊さの尺度である国民総生産(GNP)で示されるような、金銭的、物質的な豊かさを目指すのではなく、精神的な豊かさ、つまり心の幸福を目指すという考えである。現在、政府はGNHの増加を政策の中心としている。2007年に初めて行なわれた国政調査で『あなたは幸せですか』という問いに対し、九割が『幸福である』と回答した。ブータンは、北を中国、南をインドにはさまれた国であり、近隣にネパール、バングラディッシュといった国々がある。そうした国々では、貧しさのゆえに路上で物乞いをしている人々が大勢いるのを見かけるのに、ブータンでは見かけたことがない。私は『ブータンには物乞いはいないのですか?』と尋ねたが、『いません』という答えだった。決して裕福ではないが、幸せだと感じているからである」

幸福度は人や環境によって違う。パウロのように獄中でも主を賛美する人もいれば、ヘロデのように王宮に住んでいても不平不満のあまり平気で家族を殺す人もいる。聖書には「イスラエルよ、あなたはしあわせである。だれがあなたのように、主に救われた民があるだろうか」(申命記33:29)とある。神のみ救いを約束された者が幸せだというのである。人の考えや、環境を越えて神との関わり合いこそが何よりも幸せなのである。そして、その幸せは既に神からあなたにも届けられている。要は、それに対してあなたが心を開くか否かである。あなたにも幸せになって欲しい! これが主の心からの叫びである。