石叫■ 「フランク・ミラー氏」
歴史を通じて日本人に貢献してくれたアメリカ人は数知れない。だから、特に誰がどうのと比べられる世界でもない。でもクエーカー以外の人物で、もし一人を挙げることが許されるとすれば、それはフランク・ミラー氏であろう。
ミラー氏は1929年に長年にわたる日米親善に尽くしたとして日本政府から勲四等旭日章が贈られている。1900年に南カリフォルニアのリバーサイドにミッション・インを建てた。1903年、ルーズベルト大統領の一泊を機に親交を結んでいる。それ以来、国際関係協会の会議を開き、内外有力者を自分で招待し、日米の平和のために貢献した。色々な日本の諸行事には紋付袴を着て親日ぶりを発揮し、日本紹介に努めている。また日本人の帰化のために議会にも強く働きかけている。ちなみにこのホテルではリチャード・ニクソン氏が結婚式を挙行している。これまで八人もの大統領がこのホテルを訪問していて、国立、カリフォルニア州、リバーサイド市の各史跡ともなっている。
ミラー氏は1901年には日本人組合教会設立を推進し、1916年には組合とメソジストの合同教会設立にも多額の寄付を続けている。1913年と1920年の土地法では自ら論陣を張って防止に努め、通過後には二千人の内外関係者を集めて日本人理解に尽力している。関東大震災にも多額の義援金を捧げたり、地元の幼稚園から高校に至るまで日本文化の紹介に当たっている。
彼の著名な働きとしては1932年のロサンゼルス・オリンピックの際に日本選手を招待したほか、リバーサイド市内にあるルビドー山上に城戸俊三中佐の愛馬「久軍号」の記念碑を建立している。1932年のオリンピック総合馬術競技耐久種目に出場した城戸中佐は、愛馬の疲労が著しく、どうしても障害を飛び越せなかったため、完走直前でやむなく途中棄権をした。それが愛馬精神の誉れとして賞賛を浴びたのだった。序幕式には賀陽宮(かやのみや)、同妃両殿下が参列されている。その事跡には実に枚挙にいとまがない程に多くの愛を日本人に注いでくれた人物である。「南加日本人七十年史」より抜粋
マタイ福音書に「自分を愛するようにあなたの隣人を愛せよ」(22:39)という聖書でもっとも大切な戒めがある。ミラー氏はそれを地で行った人物である。彼が在米日系人の迫害の最も酷い時代にそのように心を配ってくれたことが何よりも嬉しいではないか。彼のお墓がルビドー山にあり、桜木に囲まれているという。ぜひ行って彼の愛の貢献に心からの感謝を捧げたいものである。