石叫■         ヒュー・レイブリー神父

 先日、大谷文三先生の引退記念ランチョンがガーデナ・平原バプテスト教会で催された。そこで久しぶりにロサンゼルス・バプテスト教会引退牧師の山田和明先生にお会いした。だが、多くのプログラムの中での会話というのは難しく、後日お手紙をお送りしますという事に相なった。それが左記のものである。

「戦時中、敵国である日本人憎悪の中で、彼らとその家族を尋ねる旅を続けたアメリカ人として、ロサンゼルスで著名な三人といえば、日本人街のメリノール・カトリック教会のヒュー・レイブリー神父、ロサンゼルス近郊のパサデナ在住のクエーカー教徒ハーバート・ニコルソン先生、さらにロサンゼルスのバプテスト・ミッションのラルフ・メイベリー総主事でした」

現在、クエーカー教徒の貢献についての本『日米の隠れたヒーロー』の出版の最終調整に入っているが、そのような時に得られる情報というのは貴重である。そんな中での山田先生からのお手紙であった。日系人が強制収容させられるという前代未聞のアメリカ版「出エジプト」が行われようとしている時に、クエーカーはもとより、多くのキリスト教会、その他の団体が日系人を助けて下さった訳だが、その中でもカトリック教会の助けも実に大きかった。

特にレイブリー神父の場合には日系人がキャンプから帰還して後、ロサンゼルスの日系人社会が彼のために謝恩会を催し、新車を贈呈したのを見ても、その感化の偉大さを知ることができよう。その彼のエピソードの一コマである。

彼は強制収容所に食料物資を運び入れる地元のアメリカ人業者が不正をしていたことを知っていた。でも彼は黙っていた。やがて日系人が収容所から解放されて西海岸に帰るということになっても彼らには仕事がない。そこで神父は、その不正を働いた業者に、「日系人に仕事を与えよ。さもなくばかつての不正を暴くぞ」と、いわば脅したのである。その結果、業者は多くの仕事をもたらしたのだった。これはまさに「レ・ミゼラブル」を地でいったストーリーではないか! それは銀の食器を盗んだ泥棒を咎めなかったミリエル神父の話であるが、レイブリー神父も不正を利用して日系人に仕事をもたらしたのであった。

箴言に「かしこく思いとどまるがよい」(23・4)とある。事実を知って思いとどまることが、これほど鮮やかに浮き彫りにされるとは! それが後になって日系人への愛の奉仕につながったのだった。このような神父が日系人社会のために貢献して下さっていたとは何とも嬉しくなるストーリーではないか!