石叫■          「制服を着ることの重さ」

 先日、久しぶりに『プロジェクトX』、「絶対絶命・650人決死の脱出劇」を棚から
ひっぱり出して見た。そこに改めて感動したある言葉があった。

1993年8月6日、鹿児島市北部、錦江湾に面した吉野町付近に百年に一度という集中豪雨が襲った。それによって午後5時頃に数回の土砂崩れが起き、国道10号線と平行して走るJR日豊本線が
150メートルに渡って土石流に閉じ込められてしまったのだ。列車では330名が、国道でも身動きのできない車中の320人が、いつ起こるとも知れない土石流におびえていた。そこからは陸路での
自力脱出は無理で、船で救出されるのを待つしかなかった。そこに居合わせたのが、有村新市という
鹿児島県警の派出所勤務の警察官であった。

その頃、豪雨と相次ぐ土石流で孤立している山腹のある家屋で一人の老婆が助けを求めていた。
それを知った人々は一斉に有村を見た。彼女を何とかしてくれという叫びであった。その途中には
二万ボルトの電線が垂れ下がっていた。いつまた土石流が起こるかも知れない中ではあったが、
彼は文字通り一身を賭して救出に向かった。そして無事救出すると、皆から一斉に拍手が起こった。
そこで有村は、「制服を着ている自分の行動の重さ」に気づいたのだった。

夜の七時頃、桜島フェリーが救出のために近づいて来た時だった。桁違いの山鳴りと共に、スゴイ
やつがやってきた。有村は叫んだ。「逃げろ!」。650人は逃げ惑った。逃げると言っても、
堤防のある海岸の狭い砂地しか残っていなかった。50メートルの幅で襲ってくる土石流で列車は
押し流され、有村自身も海に飛ばされてしまった。それによって三名が命を失ったが、奇跡的にも
有村は助かった。海中でもがく溺死寸前のもう一人の女性を抱えながら、海から上がると、皆を船の
接岸できる場所まで誘導した。最後の一人が救出されるのを確認して彼は船に乗った。8時間にも及ぶ650人の救出劇であった。

ここで有村氏の「制服を着ている自分の行動の重さ」という言葉が心に響いて。彼が警察官としての制服を着けていることによって、避難者たちは彼のリードに従ったのである。パウロはローマ書で、
「あなたがたは、主イエス・キリストを着なさい」(十三・十四)と命じる。この世にあって
クリスチャンとして生きるということは、あたかも制服を着けるようなものである。人々は私たちが
どれだけ真実に信仰に生きているかを見ている。それが本当か否かを確認したいからだ。信仰は見えるものであり、見られるものである。その行動は重い。