石叫■            「信仰者の良心」

 マイク・マンスフィールドという「アメリカの良心を守った政治家」と言われた人物がいた。彼は実に素朴で誠実で謙遜の限りに生きた人物である。ケネディ、ジョンソン、ニクソン、フォードの各政権時代にはアメリカ上院の多数党だった民主党院内総務として、またカーター、レーガンの両大統領の下では高名なアメリカ大使として十二年近くも日本に遣わされている。

 彼は第一次世界大戦から第二次世界大戦直前までの期間、米海軍、陸軍、海兵隊のすべての最も下位の兵卒を務めた。モンタナ州ビュートの深く危険な銅鉱山で働き、モンタナ大学で歴史の専攻をし、後にアジア史担当教授となり、アメリカ議会における道徳的な拠りどころとなった。現代の上院で、一党の指導者が他党の現職大統領による不正選挙犯罪の捜査実施について、議会の満場一致の支持が取り付けることが出来るとは思われない。しかし彼はそれをやってのけた。その結果、七三年にウォーターゲート事件の捜査が始まったのである。政治任命の米大使が、相反する思想を持ち対立する政党を支持基盤とする二人の大頭領から引き続いて信任され、信頼を維持することは、ほとんどあり得ない。だがマンスフィールドはカーター、レーガン両大統領の下で駐日大使として、それをやってのけた。実に彼の生涯は偉大なアメリカ物語りである。

 特筆すべき働きは米原子力潜水艦ジョージ・ワシントンが八一年四月に日本の貨物船、日昇丸と衝突した際に、海軍に対して速やかに隠し立てのない報告をまとめるよう要求し、制服姿の海軍武官を同行させ、園田外務大臣の前で四五度の角度で腰を折り、深々と頭を下げたことだった。その結果、日本の怒りは消えた。そんな彼のリーダーシップ哲学は、中国の賢人、老子に土台している。「指導者は人々にその存在をほとんど知られないのが最高である。指導者が仕事を成し遂げた時、人々は『成し遂げたのはわれわれだ』と言うように」仕向けることであった。アメリカの良心と言われるゆえんである。彼の墓石には「マイケル・マンスフィールド二等兵米海兵隊」とあるだけである。

 聖書の中で信仰者の良心と言われる人を列挙するとすれば、あまたある中で、主イエスの十字架の言葉を引用し、「主よ、どうぞ、この罪を彼らに負わせないで下さい」(使徒七・六〇)と言って眠りについたステパノであろうか。信仰と聖霊とに満たされていた人物なればこそであるが、今日の私たちも同様に、同じ聖霊によって「信仰者の良心」と言われる様な歩みをしたいものである。