石叫■            「個性か調和の妙か」

 8月30日の羅府新報に載っていた、「個性か調和の妙か」をご紹介しよう。
ウィスキーに関するものだが、その醸造過程に大きな教訓を覚えたのである。

 ニッカウィスキーの「シングルモルト余市1987」がシングルモルト部門で、サントリー「響30年」がブレンデッド部門で最優秀賞を獲得した。
両者とも欠かせないのがモルト原酒。モルト(大麦麦芽)を乾燥させてから、温水を含ませて麦汁をろ過。
発酵後に蒸留し、たるに詰め、熟成させて造る。と一口に言っても、ろ過方法、発酵に使う酵母の種類、たるの素材など製造過程のわずかな違いが
性格の異なる原酒を生む。たるを置く棚の段が違うだけでも差ができる。両社とも毎年100種を越える原酒を未来の一滴のために仕込む。
シングルモルトは一つの蒸留所のモルト原酒を組み合わせて造る。そのため、味や香りに個性が出やすい。
ニッカ余市の個性は余市(北海道)のモルトの乾燥時に使う草炭がかもし出す。「1987」は二十年の時間を包含しているから芳醇な味わいをあわせ持つ。
個性が調和された妙なる世界なのだ。

 一方、ブレンデッドは、複数の蒸留所のモルト原酒の他、とうもろこしと麦芽原酒を使うため、フルオーケストラが奏でる交響曲のようなハーモニーが魅力とされる。
「響」には30年以上を経過した30を超える原酒が使われている。「それぞれの原酒の個性が求められ、それぞれのピークを逃さないよう見極める」。
喉をすべり落ちた後、ビャクダンやキャラなどの香木のような香りが立ち上がるのは、サントリーが独自開発したミズナラのおかげでもあるという。
「響」は販売価格10万5千円、「余市」は2万百円とのこと。うなずける値段ではある。

 ペテロ第一の手紙2章9節に、「しかし、あなたがたは、選ばれた種族、祭司の国、聖なる国民、神につける民である。
それによって、暗やみから驚くべきみ光に招き入れて下さったかたのみわざを、あなたがたが語り伝えるためである」とある。
この「驚くべき」という言葉が、文語訳聖書では「妙」となっている。妙とは驚くばかりに輝く主イエスの十字架の救いのみ業を意味する。
それを体験した者が心を合わせる時に、お互いの個性が生かされ、調和され、微妙な味わいが醸し出されてフルオーケストラが奏でられてゆく。
指揮者は主イエスであり、そのタクトをしっかりと見つめ続けることが聖書日課であり、日々の祈りである。

じっくりと熟成された日々の積み重ねを通して、はじめて個性が生かされ、調和された妙なる世界を味わうことが出来るというものである。