石叫■            「三つ星」

 ラフ新報の十一月二十八日付の『ひと』のコーナーに、「ミシュラン東京三ツ星和食{小十}主人」奥田透さんの一味違う記事が載った。

 「ほおをつねって確かめました。本当に夢じゃないんだと」。料理人になって二十年目、節目の年に授かった栄誉に笑みがこぼれる。
東京・銀座に構えた日本料理店「小十」が、レストラン格付け本「ミシュランガイド東京」で8店しかない最高の「三つ星」に選ばれた。

 順風満帆な道のりではなかった。開店後半年間は全く客が来ない日が続いた。家賃も従業員への給料も払えず、銀行からの融資も断られた。
「極限まで追いつめられました」。まず店の存在を知ってもらわなければと、必死の思いでグルメ誌十社に手紙を出した。
その中の1誌で紹介されたことを機に評判が広がった。

 料理は、客の意向を聞いて、献立を組むおまかせコースが中心。どの客にどんな料理を出したか、開業以来すべてメモで残してある。
再び予約してくれた時にはそのメモをもとに、献立を練る。毎日違った試みで最高のもてなしを追求する姿勢が支持されるゆえんだ。信条は、
「自然」であること。食材そのものを生かし「足りない部分に少し色気を足すのが僕の仕事」と話す。人間と同様に、生命体である食材。
「そのエネルギーが体内に吸収される過程で、しみじみと幸せがしみわたるような料理にしたい」。十八歳でこの世界に飛び込んだのは、
自分の腕だけで勝負する仕事に魅力を感じたから。世界に六八店だけの「三つ星」評価には重圧も伴うが、「期待に応えられなくてどうする! 
本当の勝負はこれからです」

 確かに、開店して半年間もお客さんが来なかったというのは壮絶だ。でもそれが奥田さんの原点であった。
それがあって今日の「三つ星」がある。

 箴言に、「正しい者は七たび倒れても、また起きあがる」(二四章)とある。正しいとは、勇気ある者という意味で、
倒れたままではいない。
この命を活かして下さる神に最高のもてなしをするために這い上がる者のことだ。主は十字架という死からまさによみがえったではないか。
倒れるどころではない。死んでいたのだ。それは、倒れているあなたを振るい立たせるためであった。
そして天国のガイドブックである「命の書」にあなたの名前を記して下さったのだ。その主の期待に応えられないで、どうする!