「ヨセミテ・カートラブル」F

 さて最初の夜、洗礼式の終わった後に、キャンプの最大のイベントである夜空の星観賞のために、
グレーシャーポイントに行く。そこは360度、人工の灯りの見えない所であり、あまりの星の多さと
輝きに唖然とする所だ。そこでかれこれ小一時間も見ていただろうか、そろそろ帰ろうという段になる。
ところが出発して数分も経たないうちに僕の日産クエストが突然、暗黒の路上で止まってしまったのである。
しかも立て続けに三回も。一週間前にも家の付近で同じトラブルがあっただけに、それが心配だったのだが、
やはり起こってしまった。幸い、同行の車が数台続いてくれていたので、万が一の場合にはヘルプに
なったとは思うが、一瞬ヒヤットした。
そして思った、このままトラブルが続いたら、一体これからの計画はどうなるのかと・・・。

 そして最終日、ヨセミテを出て、マンモスに向かう途中で一気に2000フィートを下る
タイオガ峠をドライブしている時であった。エンジン・ブレーキで下っている時、余りの急勾配で
長い下り坂が続くので、どうしてもブレーキを踏む。坂も終盤を迎える頃にブレーキ・ペダルが
ブルブル震え出したのである。しかも何かが焼ける匂いがする。すぐに車を止め、皆に祈ってもらった。
それからはブレーキ・ペダルを踏まず。エンジン・ブレーキだけで下りることにしたが、
トラブルはそれだけでは終わらなかった。

 その日はそこを出てスキー・リゾートで有名なマンモスの近郊にあるロック・クリークに行く
予約をしてあったので、三九五号線から四マイル入ったキャンプ地に向かう。
そこまでは延々と続く上り坂だ。ところが五分もしないうちに、車のチェック・エンジン・ライトが
点くではないか。やがてエンジンが止まった。少ししてまたエンジンをスタートさせるのだが、
それでも五十メートルも行かぬ間に、エンジンが再び止まり、それ以上、車はもう一歩も上ることが
出来なかった。それが愛車の限界だった。

 聖書に、「悩みの日にわたしを呼べ、わたしはあなたを助け、あなたはわたしをあがめるであろう」
(詩篇五〇篇)とのみ言葉がある。
「皆が無事であるように」と、祈りに祈って臨んだ今回のキャンプであったが、何という事だ。
それからの祈りは無事に帰ることだけであった。だが、それに主は十二分に応えてくれた。
そして賛美した。主がやはり助けの手を差し伸べて下さっておられたことを。
皆が無事に、しかも事故もなく帰れたのだから。

(完)